和食は世界無形文化遺産に登録され、日本の長寿と健康を支える食文化として世界中から注目されています。
その基本は「まごわやさしい」という言葉に凝縮されています。
各文字が指す食材は、日本の伝統的な食生活の基盤を形成し、栄養バランスの良さが長寿の秘訣とされています。
和食の基本:まごわやさしい
- ま:豆類
日本の「畑の肉」とされる大豆は、味噌や納豆、豆て食卓に欠かせません。大豆には豊富なビタミン、ミネラル、そして植物性タンパク質が含まれており、健康維持に役立ちます。 - ご:ごまなど種子類
種子類は抗酸化物質が豊富で、健康な血液循環をサポートします。 - わ:わかめなど海藻類
わかめや昆布には、ミネラルや水溶性食物繊維が豊富で、代謝をスムーズにします。 - や:野菜類
季節の野菜を中心に食事に取り入れることで、必要な栄養を自然のリズムに沿って摂取できます。 - さ:魚など魚介類
魚には良質なタンパク質とオメガ3脂肪酸、また貝類には良質な飽和脂肪酸が含まれています。 - し:椎茸などきのこ類
椎茸などのきのこは免疫力を高め、アミノ酸も豊富なので、料理に風味も与えてくれます。 - い:芋類
芋類はエネルギー源であり、食物繊維も豊富です。
大豆の栄養価と利点
最初の「ま」は、豆のこと。豆腐や味噌、醤油、納豆など、さまざまな形で日常的に摂取されてきました。我が家も毎日何かしらの形で口にしています。
大豆に含まれる栄養素として主なものは以下の通りです。
ミネラルとビタミン
鉄分やカルシウム、ビタミンB群が豊富で、健康維持に必要な微量栄養素カリウム、マグネシウム、亜鉛なども含まれています。
植物性タンパク質
乾燥大豆100g中に33.8gものタンパク質を含んでいます。タンパク質は、私たちの臓器や筋肉、皮ふ、髪、血液などを構成するうえで欠かせない成分です。
イソフラボン
植物性エストロゲンとも呼ばれ、更年期障害の緩和に寄与し、骨粗鬆症の予防にも効果が期待されます。
サポニン
血中のコレステロールや中性脂肪の低減を助ける成分で、心臓病や動脈硬化の予防に効果があるとされています。
このように大豆には、ビタミンやミネラルが豊富であり、特にタンパク質の供給源として昔から欠かせない存在です。日本人の食生活において、肉や乳製品の消費が増える前から大豆は主要な栄養源でした。
欧米のソイフリー潮流と大豆への懸念
しかし近年、欧米では大豆製品に対する懐疑的な視点が浮上し、「ソイフリー」の潮流が広がっています。それに追随するように、最近SNS上で、大豆は体に悪いという声が、日本国内でも広がり始めています。
しかし、本当に大豆は悪者でしょうか?
今日は、大豆の栄養的な利点と懸念点、民族性に基づく食品の受容性、そしてバランスの取れた摂取の重要性について掘り下げていきます。
ソイフリーが広まる理由
欧米で「ソイフリー」が広まっているその主な理由は以下の通りです。
反栄養素の影響
大豆にはレクチンやフィチン酸などの反栄養素が含まれており、これがミネラルの吸収を阻害する可能性が指摘されています。
しかし、このような反栄養素は他の多くの植物にも存在し、適切な調理法でその影響を減少させることが可能です。
豆の反栄養素は一晩水に浸し、その水を捨てることで減少させることができます。また私たち日本人は反栄養素を無毒化させるために発酵技術を使ってきました。納豆や味噌がそうですね。
我が家では豆乳のままゴクゴクと飲むことはまずありません。(笑)マイグルトを使って発酵させ、豆乳ヨーグルトとしておやつに少量食べたり、豆腐や納豆、味噌汁で昼食の食卓に上がることが多いです。
GMO(遺伝子組み換え)問題
アメリカでは大豆はもともと家畜の餌として栽培されてきた歴史が長く、多くが遺伝子組み換えで生産されています。そのため、消費者が食品の安全性に対して懸念を持つのは当然です。
一方日本では、農作物の遺伝子組み換えは今のところ禁止されているため、国産の大豆製品を選ぶ限りは、消費者は安心して利用できます。
ホルモンバランスへの影響
イソフラボンはエストロゲンに似た構造を持つため、甲状腺機能への影響や男性の女性化(胸が大きくなるなど)の懸念が指摘されることがあります。
しかし、これらの影響が出るのは大量摂取の場合がほとんどであり、サプリメントなど精製されたものを摂取していたり、豆乳をプロテインなどと混ぜて常飲していたり、ソイラテにしている場合に起こります。毎日摂取しているということがない限り、健康への問題にはなりません。
アレルギー問題
ピーナッツほど頻度は高くないものの、大豆アレルギーの方も存在します。そのため、すべての人にとって大豆が適切な食品とは限りません。これは、他の植物でも同様です。
ですので、アレルギーの方でない限り、適切に摂取すれば多くの人にとって健康的な食品です。
ではなぜ欧米でソイフリーが主流になったのか?
欧米における「ソイフリー」の潮流は、ただ単にこれらの問題から来ただけとは考えられません。
これは、乳製品産業VSプラントベースミルクというような産業界の競争が垣間見えます。
乳製品業界がプラントベースミルクの主流であるソイミルクを市場から排除しようとしている構図が浮き彫りになったのです。そのことでソイフリーを謳う人が増えたのですが、果たして人々はじゃあ牛乳に戻るかというとそうではなく、新しいプラントベースミルクを模索し始めるという、植物性ミルク戦国時代が到来しました。
ソイフリーにより植物性ミルク戦国時代の到来
そこで企業も、ソイミルクの代わりに、アーモンド、オーツ、カシューナッツ、ココナッツ、ライス、フラックス(亜麻)などの他のプラントベースのミルクを販売し始めます。さらにはポテトミルクなどというものも出始めているそうです。欧米ではこのように、なんちゃって植物性ミルクがスーパーのミルク売り場を席巻している状態が続いているそうです。
その中でアーモンドミルクは現時点で、ソイミルクに代わる王者の地位を誇っていますが、実は作物としては大量の水や蜂を必要とするらしく、環境問題などの意識が高い人々の間では、すこぶる不人気だそうです。
確かに昔、私もYouTube動画でアーモンドミルクを手作りするところを差し込んだら、かなり多くの批判コメントがやってきました。しかも作ってみて感じたのは、1杯のアーモンドミルクに、こんな大量にアーモンドを使うんだ〜確かに環境に良くないな〜と思ったのが正直な感想です。で、そのとき以来作らなくなりましたけど。
ちなみにアーモンドといえば、産地としてカリフォルニアが有名ですが、そもそもカリフォルニア自体が乾燥地帯であり、水を多く必要とする食物の産地としては全くサステナブルではないという声は以前から強くありました。
またココナッツも需要増加による椰子の乱獲による環境破壊や労働問題が露呈し、カシューナッツも劣悪な労働問題が指摘されているわけです。
実際のところ温室効果ガスの排出量が少なく、環境負荷も低い大豆は、サステナビリティの観点からも、もしかしたら植物性ミルク戦国時代が落ち着けば、再評価される可能性があります。
民族性と食文化の違い
じゃあやっぱり大豆って体にいいよね〜と、そのまま受け入れるわけにもいかない問題がもう一つあります。それには、民族性の違いという問題です。
アジアと欧米の食文化の違いは、食品の消化・吸収にも影響を与えます。
例えば日本では大豆が長い歴史の中で受け入れられてきた一方、欧米では新しい食品として適応が進んでいない可能性があります。
乳製品の消化でも同様の差が見られ、多くの日本人は乳糖不耐症のため、牛乳を飲むと消化不良を起こしますが、欧米人にとって乳製品は一般的な栄養源であるため、問題なく消化できる人が多いですよね。(しかし大量摂取はやはり骨粗鬆症になるリスクがあるため、アメリカでは一日200mlまでに抑えるように注意喚起されています。)
また海藻や海苔も、日本人で消化できない人はいないのに、祖先が酪農家だった欧米人の体では消化できない人が多いといいますもんね。
このように、民族性に基づく食の受容性の違いは、健康食としての大豆の評価に影響を与えていると思われます。
バランスの取れた食生活の重要性
どのような食品でも、適量を超えた過度な摂取は健康に悪影響を与える可能性があります。
単一の食材に対して、あれはダメ、これはダメという方がいますが、大豆に限らず、すべての植物には何らかの生物毒が含まれています。
例えば、ホウレンソウやブロッコリーにはシュウ酸が含まれ、過剰摂取すると腎臓結石の原因となることがありますが、適切な量を適切な調理法により摂るのであれば、大変栄養価の高い食材です。
したがって、健康を維持するためには、体にいいからと特定の食品に過度に依存するのではなく、さまざまな食品をバランスよく摂取することが大切です。
まとめ:大豆を通じた健康的な食生活の提案
日本の伝統的な和食は、このバランスの良さが特徴です。
日本人なら、やはり和食の基本「まごわやさしい」を実践することで、栄養バランスが整い、健康的な生活を維持できます。特に大豆は、健康に寄与する多くの利点を持ち、日本人の長寿の秘訣でもあります。
食品の一つ一つに良い悪いの白黒で判断するのではなく、どんな食材でも取り過ぎれば毒になるということを知って、全体のバランスを重視した食事を心がけましょう。
欧米のソイフリー潮流に影響されず、自分たちの文化に根ざした健康的な食生活を続けていくことが、持続可能な未来への一歩につながります。
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