持ち家と賃貸どっちがいい?──日本と台湾の不動産市況を見てきたmikoが徹底解説!

店主のコラム・台湾生活

こんにちは〜mikoです!

ちょっとボリューム重めの健康ネタが続きまして、もうお腹いっぱい!という感じだと思いますので、今日は全然健康とは違ったテーマで書きたいと思います!

と言いますのも、先日インスタグラムにまた視聴者様から同じ質問が届きましたので、それについて書いてみたいと思います。

それは、『なぜあなたたちは持ち家を持たず、ずっと賃貸に住んでいるの?』というご質問です。

これは台湾在住時からしょっちゅう聞かれたことでもありますが、具体的に話したことはないので、その理由や、日本と台湾の不動産に対する考え方の違いなどをシェアします。

これから台湾に移住しようと考えている方、日本に移住を考えている方に参考にしていただけたらと思います。

それでは〜いってみよう!

私の背景──不動産業界での経験と日本と台湾での実体験

その前に、私の背景を話しますと、私の父は私が幼稚園生の時に不動産会社を起業し独立しました。ちなみに私は台湾に移住する前、日本に住んでいたときに不動産業界に十数年いたこともありますし、宅地建物取引士(旧;宅地建物取扱主任者)も一年目に取得しています。不動産業界にいたときは、営業課長をしていたこともあります。一度都内に120平米の新築マンションを買ったこともありますし、それを売却した経験もあります。

さらに、台湾に住んでいた13年間で、住居用賃貸は2軒、事業用賃貸は6軒、デパート出店1軒、また周りにいた台湾人の不動産売買の話、不動産への考え方などをリアルに聞いてきたので、よろしければ参考にしてください。

どうして賃貸に住んでいるの?──まずは結論から

さて最初に結論ですが、私たち夫婦が現在までずっと賃貸に住む大きな理由は、賃料の一部を会社経費として落とせるからです。さらに資産を残す子供もいないですし、何と言っても移動に制限なく、修繕や管理の手間もなく、とても気楽だからです。

はい、とても簡単な理由です。(笑)

なぜこの論争は永遠に続くのか──価値観の多様性

持ち家vs賃貸の論争が永遠に続く理由は、それぞれの人生設計、価値観、経済状況、家族構成が異なるからです。しかし、この論争の背景には、日本特有の社会構造と文化的価値観も深く関係していると思います。特に、日本の持ち家率は61%で過半数ではありますが、39%の人が賃貸という選択をしているからです。しかし台湾は87.8%という驚異的な持ち家率で、圧倒的に持ち家思考なんです!なので私たちの考えが知りたいのでしょう。

お金の面から考える「買う」vs「借りる」

ではまずお金の面を表で比較しましょう。(日本の場合)

観点賃貸持ち家
月次キャッシュフロー家賃(役員社宅なら 50〜90% 法人負担)ローン返済+管理費(マンション)+固定資産税
初期コスト敷金・礼金・仲介手数料(家賃1か月分が目安)印紙税・登録免許税・不動産取得税+頭金+ローン保証料+仲介手数料(物件価格の3%+6万円)
資金調達コストなし(更新料2年ごと)ローン金利0.3〜2.0%+団信保険料(変動型は金利上昇リスク)
修繕・維持管理故障時は原則オーナー負担(小修繕除く)修繕積立金(マンション)/大規模修繕・リフォーム費(戸建)
保有税なし固定資産税・都市計画税(新築減税後0.3〜0.4%/年)
税制優遇役員社宅:適正家賃部分を損金算入住宅ローン控除:最大13年間で総額455万円(長期優良・省エネ住宅)
経費化可否法人が借主なら〇(損金化)個人ローン返済は経費化不可(事業用併用時は按分可)
退出・売却コスト更新料(首都圏は家賃1か月)+引越費用仲介手数料・譲渡所得税・印紙税など計売却額の4〜7%

この比較を見て分かる通り、数字の面で言えば圧倒的に賃貸が有利です。

もっと深掘り──持ち家と賃貸の経済合理性

持ち家の税制優遇とその変化

日本では住宅ローン控除により、年末ローン残高の0.7%が所得税から控除されます(2025年現在)。ただし、2024年以降の新築住宅は省エネ基準適合が必須となり、購入ハードルは上がっています。新築住宅の場合、最大13年間で合計455万円の控除が受けられる長期優良住宅もありますが、建築コストの上昇により、実質的な恩恵は縮小傾向にあります。

経営者にとっての賃貸のメリット

一方で、事業を営んでいる場合の役員社宅制度の活用は大きなメリットです。適正な社宅規定を設けることで、家賃の50-90%を法人負担とし、損金算入できます。仮に家賃が月25万円で、法人負担を20万円とすると年間240万円、法人税率30%なら年間72万円の節税効果があります。(我が家は家賃5万円台だから、ぜんぜん恩恵はありませんが。苦笑)

これは住宅ローン控除と比較しても、継続性と確実性の面で優位性があります。なぜなら住宅ローン控除は13年間の時限措置ですが、社宅制度は事業継続中は恒久的に利用可能です。

日本での持ち家志向の人は、経済合理性より感情面が強い

しかしここで重要なのは、日本人の過半数が持ち家を選択する理由の多くは、純粋な経済計算以上で決めているわけではなく、感情的・心理的な要因に動かされているということが大きいのではないでしょうか。

安心感・安定感への欲求: 

「自分の城を持ちたい」「老後の住まいが確保されている安心感」「家族の拠り所としての住まい」といった心理的な充足感は、数字では測れない価値があります。

社会的プレッシャーへの対応: 

「子どもが学校でいじめられないか」という不安は、特に日本特有かもしれませんね。賃貸住まいを理由に子どもが肩身の狭い思いをするかもしれないという親の心配は、経済合理性を超えた判断基準となります。

自己実現・創造欲求: 

「好きなインテリアにリフォームしたい」「理想の住空間を作り上げたい」「DIYで家をカスタマイズしたい」という創造的な欲求は、賃貸では制約があります。

経済感覚の違い: 

「ファミリータイプは家賃が高く、払い続けるのはもったいない」という感覚も重要な要因です。長年低金利時代が続き、月15-20万円の家賃とローン返済額を比較すると、賃料が「捨て金」と感じる心理は、確かに理解できます。

これらの感情的要因は決して「間違い」ではありません。 

住まいは単なる経済財ではなく、人生の質に直結する重要な要素です。経済合理性だけで判断すべきものでもないのが、この論争が永遠に続く理由でもあるのでしょう。実際に私もマンションを買った時は同じような価値観でした。しかし、今は全く違う価値観を持っているので、この価値観が変わった時に、簡単に動けるかどうか、、、というのも考慮に入れておくべきです。

日本と台湾の住宅制度の根本的違い

さて、お国が違えばまた価値観が全く違ってきます。特に私が知っているのは台湾ですが、どうして私にしょっちゅう「家を買わないのか?賃貸にどうして住み続けるの?」と聞いてくるお国事情の違いを見てみましょう。

観点日本台湾
住民登録制度住民票を賃貸でも移転可 → 学区は居住実態で判定戶籍制度のみ。家主が戶籍転入を拒む賃貸が多く、賃貸世帯は希望学区の公立校に通えないケースが発生
税制優遇住宅ローン控除(最大13年間)/新築固定資産税減税住宅ローン利子控除は金額上限が小さく恩恵限定的
貸主と借主の力関係2024年改正民法で定期借家契約の説明義務強化など借主保護拡充家主の権限が非常に強い。保証金(押金)3か月+連帯保証人を求められるほか、短期契約後に一方的な立ち退き要求を受けやすく、家賃値上げの交渉も通りにくいため入居者の保護が弱い
子育て世帯への影響学区変更=住民票移動で簡単に対応可。人気学区取得=持ち家購入がほぼ必須。都市部は物件価格が学区プレミアで高騰
高齢期の住まいサ高住・UR高齢者住宅など選択肢多い。高齢期でも住む場所には比較的困らない。選択肢が限られる。公共高齢者住宅はごく少数で待機年数が長い一方、民間介護付き住宅は高額。私有住宅が老朽化しバリアフリー補助も限定的

台湾の戶籍制度が生む「持ち家必須」の社会構造

台湾の住宅事情を理解する上で重要なのが戶籍制度です。日本の住民票制度とは異なり、台湾では完全戸籍主義です。しかも家主の許可がなければ賃借人は今いる住所に戶籍移動ができないのです!これを知った時は本当にびっくり仰天でした。そしてこれが教育において決定的な影響を与え、持ち家率87.8%という世界最高水準の数字を生む根本的要因となっています。

台湾の公立学校は門牌(住所)による学区制が厳格で、人気校に通わせるためには該当学区内に戶籍を置く必要があります。しかし、賃貸住宅の家主の多くは戶籍移動を認めないため、子育て世帯にとって持ち家購入はほぼ必須となります。

当時従業員(26歳)が出産後、早く家を買わないと!と言うので、なぜそんなに早く買う必要があるの?と根掘り葉掘り聞きました。そうしたらこの話が出てぶったまげました。彼女と彼女の旦那さんの戸籍は屏東という南部の田舎にあり、賃貸で住んでいる新北市の賃貸住宅に戸籍登録ができないので(大家が認めない)家を買わないと子供が学校に通えない!と言うんです。他にも、近所にいる親戚の家に戸籍を置かせてもらっているという子もいて、そのことから、台湾が持ち家偏向である理由がようやくわかりました。

この制度的制約が、台湾を「賃貸では人生設計が詰む社会」にしています。 日本の持ち家率61.2%と台湾の87.8%の差は、単なる価値観の違いではなく、社会制度の根本的な違いから生まれているのです。

台湾の賃貸市場における圧倒的な力関係の格差

台湾の賃貸市場を語る上で避けて通れないのが、賃借人と賃貸人(家主)の間にある圧倒的な力関係の格差です。私自身が13年間で住居用賃貸2件、事業用賃貸6件を契約した経験からも、この格差は日本とは比較にならないほど大きいものでした。

契約プロセスの未整備と家主主導: 

台湾の賃貸市場で私が最も驚いたのは、日本のような宅地建物取引士などの国家資格制度がないため、家主自身が直接賃貸契約を行うケースが非常に多いことでした。家主が自分でインターネットに物件を掲載し、コンビニにも売ってる定型的な書類で簡単に契約を交わすため、専門知識が不足した状態での契約となりがちです。その結果、契約内容が曖昧で後々のトラブルに発展しやすく、借主側が泣き寝入りする結果に終わることが少なくないです。

更新時の家賃値上げ: 

契約更新時の家賃値上げは当然の権利として行使されます。そのためオーナーと日頃からいい関係を保っていることが重要視されます。しかも、市場相場が上昇の契機には、年間20%以上の値上げも珍しくありません。日本人の考え方からすると理不尽に感じるようなことがよく起こります。借主側に拒否権はほとんどなく、受け入れるか退去するかの二択を迫られます。お陰様で私の場合は律儀な日本人というイメージがあったのか、13年間で値上げ交渉は1軒しかもたった1回だけで、しかも良識的な範囲での値上げでした。退去時に償却されるはずの敷金が全額戻ってきたケースが3軒もあります。要するに大家さんも人の子なので、良好関係を保てている限りとても人情深いのです。私はラッキでしたが、全体的にはそのようにいかないケースの方が多いように見受けます。

突然の退去要求: 

家主の都合による退去要求も頻繁に発生します。当該物件の売却、家族の使用、改装などを理由とした退去要求に対し、借主は基本的に従わざるを得ません。日本のように借主の権利主張は全く認められません。あくまでもオーナーの財産を借りているに過ぎません。ですので退去期間も待ったなしで1-2か月程度と短いケースがほとんどで、借主の生活への配慮はほぼなく限定的です。

設備・修繕責任の曖昧さ: 

設備の故障や建物の不具合について、誰が修繕責任を負うかが曖昧なケースが多々あります。家主側が責任を回避し、結果的に借主が費用負担するケースも少なくありません。私も店舗で借りてた物件の構造部分に瑕疵があることで店内に洪水のような水漏れが発生した時、こちらは被害者であるにもかかわらず、家主は弁償どころか全く動こうとせず、借主のこちらが修理代を負担せざるを得ませんでした。しかしこれは構造部の隠れた瑕疵からきた問題のため、日本だったら契約解除要件で、区分所有者全員でゼネコンを訴えられますよとアドバイスしましたが、全く聞く耳を持ちませんでした。(不思議。笑)しかし、住宅で借りていた物件では、ちょっと不具合があっただけで大家さんがすぐ修理業者さんを呼んでくれて、こちらは一銭も払わなかったのも事実です。家の中の電球1つでもです。なのでこれも大家さんと間に入っている仲介業者の質によっても(法が整備されてないため)大きく違いが出てくるんですよね〜。

と、そんなこんなで、賃貸で借りて暮らすには割とストレスのかかる状況ではあります。私はラッキーなことに水漏れした物件と、もう一軒は大家が海外に居住してた結果、必要書類の提出が遅れて延滞税を払わされた物件以外では、あまり悪い印象を受ける経験はしていないのですが。

このようなことは台湾だけでなく多くの海外の物件でアルアルな話だとは思いますが、日本では味わえないとても貴重な経験をさせていただきました。

老後を見据えた住まいとして台湾人との考え方の違い

台湾に13年間住み、多くの台湾人と不動産について話してきた経験から言うと、台湾社会における持ち家は単なる住まいを遥かに超えた意味を持っています。

台湾の住宅事情で特徴的なのは、日本のUR都市機構や公営住宅のような公共的で手頃な賃料で住める住宅の選択肢が極めて少ないことです。民間の賃貸住宅が市場の大部分を占める中で、家賃水準も決して安くはありません。また、社会保障制度の歴史が浅く、年金制度も比較的新しいため、多くの台湾人が老後の生活保障を住宅に依存せざるを得ない状況があります。

さらに重要なのは、台湾の不動産価格が長期間にわたって上昇し続けてきたことです。特に台北市や新北市などの都市部では、住宅は確実な資産形成の手段として機能してきました。そのため、若いうちに無理をしてでも住宅を購入し、老後には家賃負担のない生活を確保するとともに、不動産価値の上昇による資産形成を図ることが人生設計の大前提となっています。

台湾の賃貸市場でもう一つ特徴的なのは、オーナー側の権利が非常に強いことです。契約更新時の家賃値上げや退去要求なども比較的容易で、借主の立場は決して強くありません。オーナーの都合による条件変更や契約終了の話は珍しいことではありませんでした。

そして何より深刻なのは、年齢を重ねると借りられる住まいが急激に少なくなることです。多くの大家が高齢者への賃貸を避ける傾向があり、70代、80代になると住宅確保が困難になります。これが台湾人にとって若いうちの住宅購入を「老後のライフライン確保」として位置づける決定的な要因となっています。

また、戶籍制度の影響で、住まいの近所にある公立校に子どもを通わせるというためだけでも、該当学区内に持ち家を構える必要があります。これが教育熱心な台湾の親にとっては、さらに評判の良い学校に通わせるために、住宅購入が「子どもの将来への投資」として位置づける要因となっています。賃貸では戶籍移動がほぼできないため、地方から出てきた若い子は、結婚すら躊躇する現状が、少子化へと進ませていると感じます。さらに子育て世帯にとって持ち家は選択肢ではなく必須条件となり、女性の社会進出の背景には、共働きをしてローンを共に返すしか家を買う方法がないという社会的背景があるのです。

私が台湾で事業をしていた際に接した多くの台湾人男性が、結婚前に住宅購入に奔走する姿を目の当たりにしました。「有房有車」(家と車を持つこと)が社会的成功の象徴とされ、特に男性にとって住宅所有が結婚の前提条件とされることが多いのです。また、女性も然りで結婚の理由は、夫婦でローンを組むためという子も多かったです。

これに対し、日本では住民票制度により賃貸でも学区確保が可能で、UR住宅や公営住宅、サービス付き高齢者向け住宅など多様な住宅選択肢があります。また、社会保障制度も相対的に充実しているため(今の若い子にとっては不安しかないと思いますが。)私たちのように50代で子どもがいない夫婦にとって、持ち家にこだわる社会的圧力は台湾ほど強くありません。むしろ、老後の住み替えの自由度や資産の流動性を重視する選択肢が、日本では社会的に受容されやすい環境があると感じています。

金利環境の変化と住宅購入への影響

2025年の住宅市場は大きな転換点を迎えています。日銀の追加利上げにより政策金利は0.5%に上昇し、住宅ローン金利も上昇局面に入りました。変動金利は年内に0.25%以上の上昇が予想され、固定金利のフラット35も2.05%水準まで上昇しています。

金利上昇が与える実質的インパクト

しかし、まだまだ諸外国と比べれば低金利であることは間違いありませんが、物価がこれだけ上がっている中で、金利1%アップの影響は計り知れないものがあります。

3000万円の住宅ローンの場合、金利が1%上昇すると35年間の総返済額は約520万円増加します。これは月額換算で約1.2万円の負担増となり、ローンを組んで買う場合には、簡単に手放すこともできず、ライフスタイルを大きく変換せざる負えない将来不安の一因として考慮しておかなくてはなりません。

住宅を「投資」で考えることの危険性

「自宅は資産」ではないという現実

よく「持ち家は資産だ」という話を聞きますが、これは大きな誤解だと私は考えています。同じ不動産であっても、自分が住んでいる以上、そこからリターンが生まれることはありません。むしろ固定資産税、修繕費、管理費などのコストが継続的に発生し続けます。

真の資産とは、継続的にキャッシュフローを生み出すものです。賃貸に出している投資用不動産は確かに資産と言えますが(ローンがなく、資産価値が下がらなければの前提)、自宅は経済学的には「負債」に近い性質を持っています。

「住宅は投資」という幻想の危険性

不動産業界では「住宅は投資」「老後は住む場所に困る」「不動産は値上がりする」といった営業トークがよく使われますが、これは非常に危険な考え方です。特に日本のような人口減少社会では、多くの地域で不動産価格の長期的な下落は避けられません。

建物の価値は築年数とともに確実に減少し、木造住宅の場合、20-30年でほぼ無価値になります。土地の価値についても、立地によっては大幅な下落リスクを抱えています。

今地方が抱える問題は、親の持ち家の相続問題です。建物は老朽化してほぼ無価値な上に、売却をしようとしても上物がある限り一向に売れない。建物を解体するには数百万円のお金がかかる。だからといって放置していると「空家等対策の推進に関する特別措置法」により行政から改善命令を出されて罰金を払わされる可能性だって出てきます。また、2024年4月1日から相続登記が義務化されたことで、これまた放置したら罰金が課されます。ああ、困ったもんですね。

それと、2024年度の制度改正で、住宅を新築する場合、省エネ基準適合が必須となりました。これによって建物価格が大幅に増加しているのを無視できません。省エネ基準を満たすための断熱材や高効率設備の導入により、新築住宅の価格は従来より30-50%上昇しているケースも少なくありません。そう、どんなにど田舎に家を建てようが、上物である建築価格が大きく上昇しているため、地価の安い土地を購入しても、安く家を建てられない時代がやってきたのです。

この価格上昇は「投資価値」ではなく、単なる「コスト増」です。しかもその後売却を考えたところで、省エネ基準適合のための追加コストが将来の売却時に回収できる保証はなく、むしろ技術の進歩により数年後には陳腐化するリスクを抱えています。例えば、現在の省エネ基準も10年後にはより厳しい基準が求められる可能性があり、その時点で既存住宅は「旧基準住宅」として価値を大幅に下げることになります。

さらに、住宅ローン控除の適用条件も厳格化され、省エネ基準を満たさない住宅は控除対象外となりました。これは中古住宅市場にも大きな影響を与え、基準を満たさない既存住宅の流動性が著しく低下する可能性があります。

つまり、現在住宅を購入することは、より高いコストでより陳腐化リスクの高い資産を取得することを意味します。 これが「投資」と呼べるでしょうか。むしろ確実に価値の下がる消費財を高額で購入していると考える方が現実的だと私は思うのですが。

機会費用の重要性

住宅購入に数千万円の資金を投入することで、他の投資機会を失うことも考慮に入れないといけません。例えば、5000万円のマンションを購入する代わりに、その資金を年率5%で運用できれば、年間250万円のリターンが期待できます。これは月額20万円の家賃に相当し、同程度の賃貸住宅に住みながら資産を増やすことが可能になります。

さらに、5000万円のマンションは二つに切って半分だけ売ることはできません。例えば私たちのように事業を行っていると、ここぞという挑戦する機会がやってくるものです。その時に投資に回していたお金なら、必要分だけ取り崩すことができますが、不動産は全部売却し、さらに手数料や不動産売却にかかる税金などもかかり、資金が入ってくるまでにタイムロスがあります。その間にチャンスを逃してしまうかもしれません。しかも売却には買主あってのことです。早く売るためには買い叩かれることも考えておかなければなりません。このように現金化するのがとても困難なので、不動産投資に素人が手を出したら「必ず負けが決まったゲームになる」。これが元不動産業界にいた私の持論です。

私が考える「終の住処まで」の住まい戦略

子育て期や単身世帯の方の住まいの選択については長くなるのでスッ飛ばして(笑)私の視聴者で一番多い、中高年期の住まいについて考察したいと思います。

中高年期──「終の住処」の考え方

50代以降の住まい選択では、「終の住処」という概念を重視するようになってくると思います。ここでよく考慮される要素は以下の通りです。

持ち家を選ぶ場合の利点:

  • 住宅ローン完済後の住居費負担軽減
  • 自由なバリアフリー改修
  • 心理的安定感と愛着形成
  • 子どもや配偶者への資産継承

賃貸を継続する場合の利点:

  • 健康状態や介護ニーズに応じた住み替え
  • 維持管理負担からの解放
  • 資産の流動性確保
  • 相続時の複雑さ回避

高齢期の住まいに関する現実的課題──日本の高齢者住宅政策

日本では高齢者向けの住宅選択肢が実は充実しています。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、UR賃貸住宅の高齢者世帯向け割引制度、有料老人ホームなど、多様な選択肢があります。田舎に行けば、タダで家が手に入る市町村もあるほどです。これらの制度により、賃貸派の高齢者も持ち家であっても、住まいを確保しやすい環境が整っています。これは海外の人が聞いたらびっくりするような話です。

しかし、ほとんどの方が現役時代にローンを終わらせ、終の住処はローンの終わった持ち家で死ぬまで住むことだと考えていることでしょう。そこで持ち家で起こったあるケースをご紹介します。

リバースモーゲージの悪夢──持ち家神話の落とし穴

数年前に「老後資金不足の救世主」として脚光を浴びたリバースモーゲージが、今深刻な問題を引き起こしています。現役時代にマイホームを購入し、退職金の一部を残債の返済に充て、借金ゼロで計画通りに老後を迎えた夫婦。

しかし現実には、医療費の圧迫、物価の上昇、老朽化による修繕費の高騰などで、年金だけでは生活費が不足し、最後の手段として自宅を担保にリバースモーゲージローンを組む。しかし、想定以上に長生きしたり、不動産価格が下落したりすることで、契約期間中に家を手放さざるを得ないケースが続出しています。特に所有者の夫が亡くなり、残された妻が借金を返済できず、業者の言い値で買い叩かれ、終の住処だと思っていた自宅から追い出されるケースも出ています。

またこれから深刻になりそうなのは、金利上昇局面で起こりうること、それは、ローン残高が担保価値を上回る「オーバーローン」状態になることです。この場合、金融機関から住宅の売却を求められ、住み慣れた我が家を追い出されることになります。80代、90代になってから突然住まいを失う悲劇が現実に今起きているのです。

これは重要な教訓を与えています。老後にお金がなくなれば、持ち家であっても賃貸であっても住まいを失うリスクは同じだということです。 むしろ、賃貸の場合は家賃を払えなくなった時点で住み替えの検討ができますが、リバースモーゲージの場合は契約の複雑さや高齢による判断力低下により、適切な対応が困難になりがちです。

「持ち家があれば老後は安心」という神話は、もはや通用しません。重要なのは住宅の形態ではなく、十分な金融資産と人的資本、社会的資本を確保しておくことです。

私たちの選択とその理由──50代DINKSの視点

日本は本格的な人口減少社会に突入しており、これが住宅選択に根本的な変化をもたらしています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2050年には総人口が1億人を下回り、世帯数も2030年をピークに減少に転じます。

しかも、コロナ禍以降オフィス空室率が上げ止まらず、急速なAI技術の進化により、オフィスワーカーがどんどん減っていく中で、ずっと続いてきた大都市の不動産高騰もどこかの契機で大転換を迎えると私は予想しています。

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一部の都市でいまだ不動産価格の上昇が続いているものの、それはある一定の富裕層や海外投資家たちによる投機目的で、一般消費者向けの価格帯のものは、投機目的から外れており、今後大きく値上がりを期待できるものではありません。圧倒的に立地や広さ、設備などが優れた物件、要するに超富裕層が好むプレミアム物件は上がり続けるかもしれませんが、その中に普通に暮らす日本人が含まれているとは考えられず、その投機の渦に巻き込まれるのは勝算のない勝負に挑むようなものです。多くの一般的な住宅に関しては、これから人口が減少する中で、上がる要素は一つもなく、もっと冷静に見るべきです。

今後一般的な収入の日本人が都市部で新築マイホームを持つことはほぼ不可能になり、それらの不動産は金利や賃料相場によって大きく上下動をするため、無理してローンを組んで買う人々にとってはリスク以外のなにものでもないのです。

そして反対に地方部での人口減少は深刻な問題となります。現在すでに全国平均で13.6%の空き家率が、今後20-30年でさらに上昇することは避けられません。

この状況で持ち家を所有することの最大のリスクは、中途半端なエリアで中途半端な物件を購入したとき「売りたくても売れない」状況に陥ることです。 特に地方の戸建て住宅や築古マンションでは、買い手が見つからず、負の資産となるケースが激増すると思います。一方、賃貸であればこうした流動性リスクから完全に解放されます。

移動の概念を変えるテレワーク革命

私たち夫婦の場合、オフィスを持たず自宅で仕事が完結しているため、住むエリアに縛られない生活を実現しています。これはコロナ禍を契機として多くの人が経験した働き方の変化でもあります。

この「場所に縛られない働き方」は、住まい選択の根本的な前提を変えています。 従来の「職住近接」という概念が薄れ、都心からの距離は関係なく、さらに駅からの距離にも縛られずに家を選択できることで、想像以上に選べる物件の幅が増え、安い家賃で広さや良質な生活環境を選択することができます。要するに生活の質を上げ、リビングコストを削減することが可能になりました。

「トカイナカ」という新しい住まいの選択肢

さらに、今は亡き経済評論家の森永卓郎氏が提唱した「トカイナカ」(都会+田舎)という概念に私たちも大いに共感していて、都会よりちょっと田舎寄りの場所を選びました。さすがに自給自足ができるまで田舎には引っ込みませんでしたが、最寄駅からは東京まで40分で移動することができ、しかもどこへでも電車やバスを使えば移動が可能、家賃も安く、ファミリー世帯が多く暮らしているエリアなので、大型スーパーがたくさんあり、医療機関も充実しており、物価は私の感覚では東京都心の半額という感覚です。これは都市的利便性と田舎の豊かさを併せ持つ地域で、歳をとっても暮らしやすい場所だと感じています。

まとめ

持ち家と賃貸の論争に絶対的な正解はありません。重要なのは、自分の価値観、経済状況、ライフプランに基づいて合理的な判断を下すことです。

私たちは50代DINKS経営者夫婦として、経済合理性と生活の柔軟性を重視し、今は賃貸という選択をしているに過ぎません。しかし、経済合理性では計り知れないほど、夫婦が心を揺さぶられる場所が見つかったら、家を買うという選択肢も生まれるかもしれません。そういった意味でも、人生100年時代、今はまだ身軽でいたいのです。

住まいは人生の基盤となる重要な要素です。この記事が、皆さんの住まい選びの一助となれば幸いです。

日本の素晴らしいものたち 小恰好商店

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