日本酒は、古来より「百薬の長」として人々の健康を支え、神事や文化の象徴ともされてきました。
戦前まで日本酒は「体を温め、心を癒す」飲み物として広く親しまれてきましたが、戦後の工業化とともにその価値が変わり、現在では「健康に悪い」という印象が定着しています。
しかし、本物の純米酒と、自然発酵に情熱を注ぐ寺田本家の取り組みを知ると、伝統の真価を理解するだけでなく、私たち自身の健康や生活、そして日本人のアイデンティティーを見直す契機でもあると気付きました。
日本酒の本来の力と「純米酒」の意味
「純米酒」とは、米・米麹・水だけで作られた、日本酒の原点ともいえる酒です。人工的な添加物を一切使わず、自然発酵の過程を経て生まれる純米酒には、多くの健康効果が秘められています。文部科学省の調査では、純米酒には健康促進効果が多く含まれていることが報告されています。具体的には、以下のような効能があります:
- 血行促進と血圧低下
- 善玉コレステロールの増加と血糖値の安定化
- ガン細胞の増殖抑制
- 糖尿病予防効果
- 大腸菌などの発育防止
- うつ病の改善効果
- シミの減少や肌の保湿促進
- 生活習慣病(動脈硬化、骨粗鬆症など)の改善
これらの効果は、発酵過程で生成されるアミノ酸、ビタミン、有機酸などの成分に由来します。ただし、過剰摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、適量の摂取が大切です。
戦後の変化と「三増酒」の登場
戦後の日本は、米不足と政府の税収増加を目的に、アルコールを添加してかさ増しする「三倍増醸清酒(通称:三増酒)」を普及させました。これにより、多くの酒蔵がコスト削減と効率性を追求し、大量生産の波に乗りました。
しかし、三増酒の普及に伴い、日本酒本来の味わいや健康効果が損なわれ、伝統的な酒造りの精神が失われました。
千葉県香取郡にて300年を越える老舗の酒蔵「寺田本家」も以前は時代の流れに任せた効率至上主義の酒蔵でした。
食品添加物を活用してコストを抑えながら大量生産を行い、それはいつしか、酒蔵の仲間や23代当主である寺田啓佐氏自身の体調をも歪ませました。
寺田本家の転機:発酵の力と微生物の調和

寺田啓佐氏は、自身の体調不良と、仲間たちの健康への影響を目の当たりにして、古くは日本では「酒は百薬の長」と言われてきた日本酒が、今や自分たちがつくる日本酒との違いに愕然とした啓佐氏は、「微生物の力」に目覚めました。
彼は、自然界に存在するさまざまな微生物が調和し合いながら役割を果たすことを、人間社会にも重ねました。この気づきから、寺田本家は自然発酵の道を選び、再び本来の日本酒造りに立ち返りました。
現在、寺田本家は蔵に住む微生物を活かし、添加物を一切使用せずに日本酒を醸しています。使用される米も、農薬や化学肥料を使わずに育てられたものを厳選しています。この結果、寺田本家の酒は、深い味わいと香りを備え、体にも優しいと評判です。
寺田本家を知ってすごいな!と思ったのは、年に一度地域に解放する「お蔵フェスタ」を知ってからです。本来なら神聖な酒蔵に人を入れることを嫌う酒造会社が多いところ、地域に解放していること、さらには、本来酒を作る際、他の菌が混じってはいけないので杜氏や蔵人に納豆や漬物など他の発酵食品を食べることを禁じます。しかし寺田本家では食事制限を一切せずに酒造りをすること。何を言ってるの?と思う方も多いかもしれませんが、これこそが「多様性」を重んじている証です。
酒造りの3つのスタイル「速醸酛」「生酛」「山廃酛」
まず日本酒の醸造ではアルコールを生産する酵母菌を大量に増殖させると共に有害な雑菌の繁殖を抑える必要があります。
その為に1本の仕込みに使う原料の約一割弱の米・米麹・水をまず小さなタンクで仕込んで酵母菌を植え付けて増殖させその後大きなタンクに移して本醗酵を始めます。この前醗酵工程を「酒母」または「酛」と言います。
速醸酛(そくじょうもと)
酛の仕込みにあたり現代では有害な雑菌の繁殖を抑えるために人工的に作られた「乳酸」を添加して酒母を作る方法です。酛に添加して酸っぱくすることで、酢飯や酢漬けものが腐りにくいように細菌の繁殖がおさえられます。酵母菌は酸性でも平気なので酸っぱくしておき酵母菌だけが増殖して酒母を完成させる方法で「速醸酒母」と言います。
現在売られている酒は特に表示がなければこの速醸元による製造です。
生酛(きもと)
人工的な乳酸が無い時代、雑菌の繁殖を抑えるために低温で時間をかけ仕込んでいき、自然に乳酸菌が繁殖して酸っぱくなるように誘導していくという昔ながらの手間暇のかかる製造方法です。
当時は原料米の精米歩合は低く、麹菌の力が弱かったので低温で仕込んだお米を溶かす為に幾つかのタライのような桶に分けて仕込みをおこないこれをまず櫂ですり潰す作業が必要でした。この作業を「山卸し」(やまおろし)と呼びます。
生酛は昔ながらの一番手間暇のかかる製造方法で、乳酸を添加せず自然の中から乳酸菌を作らせる方法でこれを生酛と言います。
山廃酛(やまはいもと)
明治時代になって原料米の精米歩合が高くなり、麹菌の力が強くなると手間のかかる「山卸し」の作業をやらなくてもちゃんと酒母ができるようになりました。この造りかたを「山卸し廃止酛」略して「山廃酒母」(やまはいしゅぼ)と言うようになりました。酒母のできる原理は生酛と同じです。
昔ながらの生酛・山廃造りは手間がかかり現在少数派ですが、その良さが見直されていて復活させる蔵が増えています。
寺田本家の自然酒がもたらす健康効果
寺田本家の自然酒は昔ながらの手間暇がかかる生酛造りであり、速醸造りでは得られない深い風味を持つだけでなく、健康へのポジティブな影響も期待されています。特に以下の点が注目されています:
体への優しさ
自然酒は、翌日に不調を引き起こしにくいという特長があります。これは、自然発酵の過程で生成される抗酸化物質が、体の酸化を抑えるためです。
微生物の力
蔵に棲む微生物たちが酒に命を吹き込むため、その酒はまさに「生命の芸術」とも言えます。
免疫力の向上
発酵過程で生成される成分が、免疫系をサポートし、健康維持に貢献します。
日本酒文化と現代社会への提言
日本酒の伝統は、単なるアルコール飲料以上のものです。それは、神事に用いられ、農耕文化と結びつき、人々の生活を支えてきた文化的な遺産でもあります。寺田本家の自然酒は、伝統と芸術を兼ね備え、微生物との共生によって生命力を宿した特別な存在です。
私たちは、本来の日本酒の魅力を見直すべき時代にあります。心を込めて造られた混じり気のない純米酒は、単なるアルコール飲料を超え、私たち日本人のアイデンティティーそのものです。その中でも寺田本家の自然酒は、まさに芸術品とも言える存在であり、飲む人の心と体を癒す力を持っています。
結論:自然酒で未来を醸す
寺田本家の自然酒は、微生物たちの共生が生み出す芸術品であり、日本酒の真価を再発見させてくれます。特別な食事会や大切な瞬間に、寺田本家の自然酒をシェアし、その魅力を味わってみてください。
私たちの生活に本物の自然酒を取り入れることで、健康と幸福の新しい形を見つけ出せるでしょう。寺田本家の酒は、伝統と未来の架け橋となる一杯であり、その魅力を通じて、心身ともに豊かな生活を築いていきましょう。
生命の芸術を、心で感じ、体で味わう。 それが、寺田本家の自然酒を楽しむ最高の方法です。

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