こんにちは〜小恰好商店の店長mikoです。
今日は、9月の新商品にラインナップした、『かんじゃ山椒園』のストーリーを皆さんにシェアしたいと思います!
いつも私が言う、『買い物は投票である。』
生産者の製品に対する思いやストーリーを知ることで、食卓で味わう時の感動が全く違ってきます。一粒の山椒を口に入れた瞬間、その背景にある努力や情熱を感じられる。それが、本当の豊かさだと私は思うんです。
今日は、そんな心震える日本の生産者さんの物語をお届けします。
東京日本橋での運命的な出会い
それは東京日本橋の老舗デパートでのこと。店内を歩いていたとき、山椒の佃煮が目に留まりました。夫が「これ美味しそうじゃない?買って帰って食べてみたい。」と言うので、試しに購入。翌日の昼ごはんで、封を開けた瞬間、素晴らしい香りが立ち込めて、私たち夫婦は一瞬言葉を失い、目を見張りました。
これまで経験したことのない爽やかで上品な香り。口に広がる繊細な辛味。そして、プチッとした独特の食感。すぐに生産者へ連絡すると、電話口に出てくださったのはかんじゃ山椒園の社長、永岡冬樹さん。優しく落ち着いた声で丁寧に対応してくださり、その瞬間から「この方の作る山椒を、世界の人々にシェアしたい」と強く思ったんです。
調べてみると、永岡さんの物語は映画のような驚きの連続でした。
永岡冬樹さんの挑戦 ── 廃村寸前の故郷を救う
永岡さんは、和歌山県有田川町の山間部で生まれ育ちました。大学進学で京都へ出て、卒業後は地元の商工会議所で働いていた彼は、30歳の頃に再び町を出て都市部へ。しかし大都市での生活を経験する中で、自分が生まれ育った故郷の素晴らしさに気づきました。同時に、その故郷が廃村寸前だという現実も目の当たりにしたのです。
和歌山県は山椒の全国有数の生産地で、その生産量は全国の約6割を占めています。中でもぶどう山椒という品種は、粒が大きく香りも良い最高級品でした。「ぶどう山椒」という名前は、実がまるでぶどうの房のように密集してつく姿から来ています。かつては漢方に使われるため高値で取引されていたこの山椒で、永岡さんは「何か地域のためにできないか」と考えました。
2006年の価格暴落という試練

1990年代から2000年代初頭にかけて、漢方ブームでぶどう山椒の需要が急増。価格は高騰し、多くの農家がこの「金の成る木」の栽培を始めました。しかし、高値で売れるがゆえに、多くの人が一斉に栽培したため、2006年頃に供給過多で市場価格が暴落。栽培には膨大な手間と時間がかかるのに収入が激減し、多くの農家が一斉に生産を止めてしまいました。
まさにこのタイミングで、永岡さんは「かんじゃ山椒園」を立ち上げました。周囲からは「今から始めるなんて無謀だ」と言われましたが、彼には確信がありました。「本当に良いものを作れば、必ず価値を認めてくれる人がいる。漢方市場がダメなら、美食の世界に可能性があるはずだ」と。
単身でヨーロッパへ ── 世界が認めた瞬間
国内市場が冷え込む中、永岡さんは大胆な決断をします。ヨーロッパの食品展示会に、単身で乗り込むことを決めたのです。当時、英語もフランス語もほとんど話せない状態。資金も潤沢ではない上、公的な援助もない。しかし永岡さんは、「言葉の壁も文化の違いも関係ない。本当に良いものであれば、味と香りが語ってくれる」と信じていました。

展示会当日、永岡さんのブースは最初は人通りの少ない場所でした。しかし、一人のシェフがサンプルを試食したその瞬間から、すべてが変わりました。「これは……何だ?」そのシェフの驚きの表情を見た他のシェフたちが次々と集まってきました。気づけば、ブースの前には人だかりができていました。
集まったのは、ミシュラン星付きレストランのシェフたち。彼らは口々に驚きの声を上げました。「これまで体験したことのない香りだ」「中国の花椒とは全く異なる、日本独特の優雅な辛味だ」「この繊細さ、この複雑さ……デザートにも使える万能なスパイスだ」「すぐに契約したい」
その日、永岡さんのブースは展示会で最も注目される場所の一つになりました。ぶどう山椒は、「JAPANESE PREMIUM SPICE」として、ヨーロッパの美食界にその名を刻んだのです。
花椒との決定的な違い
よく「中国の花椒と何が違うの?」と聞かれます。実は、同じ「山椒」という名前でも、これほど違うスパイスも珍しいのです。
花椒は強烈なしびれと刺激的な辛味で、四川料理には欠かせない力強いスパイス。一方、ぶどう山椒は柑橘系の爽やかで上品な香りに、ローズ精油の成分(ゲラニオール)による甘い香りが特徴です。マイルドながらも後を引く繊細なしびれ、大粒で肉厚なプチッとした独特の食感。そして何より、フレンチからイタリアン、デザートまで使える上品さがあります。
例えるなら、花椒がパワフルなロックミュージックだとすれば、ぶどう山椒は繊細なクラシック音楽。どちらも素晴らしいのですが、提供する感動の質が全く異なるのです。特に注目すべきは、ぶどう山椒に含まれる「ゲラニオール」。これはバラやゼラニウムにも含まれる成分で、高級香水にも使われる華やかな香りの元です。この成分があるからこそ、ぶどう山椒はデザートにピッタリ共鳴するのです。
「みどりのダイヤ」と呼ばれる理由

地元の人々がぶどう山椒を「みどりのダイヤ」と呼ぶのには理由があります。
まず、絶対的な希少性。ぶどう山椒は、和歌山県有田川町の標高400〜700メートルの山間部という特殊な環境でしか栽培できません。適度な寒暖差、清らかな水源、霧が発生しやすい湿度、水はけの良い土壌。これらの条件が揃う場所は、世界中を探しても限られています。
収穫時期の9月、山椒の実は鮮やかなエメラルドグリーンに輝きます。一粒一粒が、まるで磨かれた宝石のよう。この美しさは、料理の見た目にも高級感を添えます。ミシュラン三つ星レストランで、白い皿の上にぶどう山椒がひと粒添えられているだけで、その料理全体が芸術作品のような存在感を放ちます。
そして何より、一つのスパイスでこれほど幅広い料理に使えるものは稀です。和食の煮物や焼き魚から、フレンチのフォアグラやソース、イタリアンのパスタやカルパッチョ、そしてチョコレートやアイスクリームなどのデザートまで。この万能性が、世界中のシェフたちの創造性を刺激しているのです。
健康効果と美味しい使い方
近年の研究で、山椒には様々な健康効果があることが分かってきました。まず注目すべきは消化促進作用。胃腸の働きを活発にし、食欲増進効果があります。また、サンショオールという成分が血管を拡張させるため、血行促進や冷え性の改善、新陳代謝の向上にも役立ちます。
さらに、ぶどう山椒に豊富に含まれるポリフェノールは、活性酸素を除去する抗酸化作用があり、アンチエイジング効果や免疫力の向上が期待できます。天然の抗菌・防腐効果もあるため、食中毒予防にも最適です。健康志向の高い方々にとって、まさに理想的なスパイスと言えるでしょう。
美味しい使い方も多彩です。白身魚やホタテのカルパッチョに粉末のぶどう山椒を少量振りかければ、爽やかな柑橘の香りと魚介の甘みが絶妙にマッチします。バニラアイスクリームに振りかければ、微かなしびれと香りがアイスの甘さを引き立て、大人のデザートに変身。鶏もも肉を焼いて、仕上げにバターとぶどう山椒でソースを作れば、シンプルながら深みのある味わいになります。
ジントニックに粉末のぶどう山椒をほんの少し加えると、柑橘系の香りが増幅され、大人のカクテルに。高品質のダークチョコレートでトリュフを作る際に、ほんの少しぶどう山椒を混ぜれば、チョコレートの苦味と山椒の香りが驚くほどマッチします。
使用量のコツは、「少なすぎるかな?」と思うくらいが適量。2人分の料理で粉末なら耳かき1杯程度、そのまま使う場合は1人あたり2〜3粒が目安です。控えめから始めて、好みに応じて増やしてみてください。(我が家は山椒が大好きなので、佃煮だったら一度に10粒くらい載せますが。)
今では世界が山奥へやってくる

最も興味深いのは、流れの完全な逆転です。かつて永岡さんは、単身でヨーロッパの展示会に乗り込みました。しかし今では、世界中の有名シェフたちが、和歌山の山奥まで足を運んでいます。目的はただ一つ:かんじゃ山椒園のぶどう山椒を分けてもらうため。

その中には、かつて「世界一予約が取れないレストラン」と称された伝説の「エル・ブジ」を率いたフェラン・アドリア氏もいます。分子ガストロノミーの革命児として世界の料理界に多大な影響を与えた彼が、かんじゃ山椒園のぶどう山椒を手に取り、その品質を認めました。実際に、アドリア氏自らがぶどう山椒を手に持って推薦する姿が、かんじゃ山椒園の公式サイトにも掲載されています。
スペインの三つ星レストラン「カン・ロカ(El Celler de Can Roca)」、フランスの高級スパイス店を通じて数多くの星付きレストラン。そして最近では、世界的なショコラティエたちがぶどう山椒を使ったチョコレートを制作し、世界的コンクールで数多くの受賞を果たしています。
フランス、パリの三つ星レストランでは、フォアグラのテリーヌにぶどう山椒を一粒添え、白身魚のポワレにぶどう山椒のソースを合わせます。イタリア、ミラノの三つ星レストランでは、生ハムとメロンに粉末にしたぶどう山椒を振りかけ、リゾットにぶどう山椒のオイルを垂らします。
ある三つ星シェフは言います。「ぶどう山椒は、私の料理に新しい次元を与えてくれた。繊細さと力強さ、優雅さと野性味。相反する要素が同居している奇跡のスパイスだ」。別のシェフは「一粒のぶどう山椒が、皿全体の印象を変える。それは、絵画における一つの色のアクセントのようなものだ」と評します。
あなたも体験できる奇跡の味わい
永岡冬樹さんとかんじゃ山椒園の物語は、単なる成功物語ではありません。故郷への深い愛、品質への妥協なき追求、世界への挑戦を恐れない勇気、そしてサステナブルな未来への貢献。これらすべてが結実した、現代の奇跡の物語なのです。
一粒のぶどう山椒の中には、和歌山の豊かな自然、永岡さんの情熱と努力、日本の伝統と技術、世界とつながる可能性、そしてサステナブルな未来への希望が詰まっています。
世界の一流シェフたちが、わざわざ和歌山の山奥まで足を運ぶ理由。それは、「ここにしかない」本物の価値を求めるからです。効率や安さではなく、品質と物語。大量生産ではなく、丁寧な手作業。グローバルスタンダードではなく、唯一無二のローカリティ。
まだこの存在を知らない皆さんにも、ぜひこの「みどりのダイヤ」を体験していただきたい。一粒一粒に込められた永岡さんの想いと、和歌山の山々の恵みを、ご自身の舌で確かめてください。きっと、あなたの料理に、そして人生に、新しい彩りが加わることでしょう。
かんじゃ山椒園のラインナップはこちら⬇️



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